海月記 ── 花笠海月の雑記帖

「くらげしるす」と読みます。

リテラリーゴシック・イン・ジャパン

 『リテラリーゴシック・イン・ジャパン 文学的ゴシック作品選』(編:高原英理ちくま文庫)が発売されました。

 http://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480431202/

 この手のアンソロジーとしてはめずらしく、韻文も入っています。※1小説以外に短歌、俳句、詩も収録されています。藤原月彦さんの句が三十三句収録されています。月彦ファンとしてはおさえておきたい本です。

 今の歌人としての作風になじんでいる方にとっては「藤原さんがゴス???」でしょうが、かつては耽美的作風の俳人でもありました。第一句集『王権神授説』のコピーは「寺山修司、春日井建氏の正統的後継者。遂に登場」だったくらいです。

 今回収録されている句の下記二冊より引かれています。

・『王権神授説』(1975/12/31/深夜叢書社

 B6ソフトカバー、函、二百十句収録

・『貴腐』(1981/8/26/深夜叢書社

 A5ハードカバー、パラ、函、三百句収録

 『王権神授説』から二十句、『貴腐』から十三句です。

 引用されている句の単行本収録情報をまとめます。

 掲載順に番号をふりました(本には番号は入っていません)。「」で囲んだのは章タイトルです。現物を見る機会がある方はぜひ元の連作のかたちと見比べてみてください。

(1)『王権神授説』「天動説」p.12

(2)『王権神授説』「天動説」p.20

(3)『王権神授説』「王権神授説」p.24

(4)『王権神授説』「王権神授説」p.25

(5)『王権神授説』「王権神授説」p.26

(6)『王権神授説』「王権神授説」p.29

(7)『王権神授説』「王権神授説」p.34

(8)『王権神授説』「王権神授説」p.35

(9)『王権神授説』「聖痕祭」p.45

(10)『王権神授説』「子供十字軍」p.54

(11)『王権神授説』「子供十字軍」p.57

(12)『王権神授説』「子供十字軍」p.58

(13)『王権神授説』「子供十字軍」p.60

(14)『王権神授説』「アルンハイム世襲領」p.77

(15)『王権神授説』「アルンハイム世襲領」p.79

(16)『王権神授説』「アルンハイム世襲領」p.80

(17)『王権神授説』「アルンハイム世襲領」p.83

(18)『王権神授説』「中世の秋」p.97

(19)『王権神授説』「偽花鳥双紙」p.103

(20)『王権神授説』「偽花鳥双紙」p.116

(21)『貴腐』「貴腐」p.8

(22)『貴腐』「貴腐」p.10

(23)『貴腐』「貴腐」p.23

(24)『貴腐』「地動説」p.23

(25)『貴腐』「地動説」p.23

(26)『貴腐』「地動説」p.27

(27)『貴腐』「火の昔」p.52

(28)『貴腐』「憑依論」p.74

(29)『貴腐』「憑依論」p.77

(30)『貴腐』「彼岸考」p.98

(31)『貴腐』「さかしま」p.118

(32)『貴腐』「さかしま」p.121

(33)『貴腐』「さかしま」p.132

 上記以外の句集からも少し入ってもよかったかなと思います。少なくとも私が月彦33を選んだら「菊膾夜叉かも知れぬ母の舌」(『盗汗集』p.95)、「葛の花見るわれを見る葛の花」(『魔都 第参巻』p.22)あたりは今だったら入れるかなー(日によって選択は変わると思います)。と、いいつつゴシックがわかっていないのでこのアンソロジーの基準からすると不適かもしれませんが。絶対的代表句は高原さんが選んだなかにありますので、それは私も選ぶと思います。あくまでも制約のある中での選択であるとは理解しつつ、高原さんの選を興味深く拝読しました。

 このようなことを書きましたが、『王権神授説』『貴腐』のころの緊張感はすばらしくて、私のベストは永遠に『貴腐』というくらい好きです。

 こうしたアンソロジーが刊行されることをうれしく思います。

 


※1

森話社から刊行中の『アンソロジープロレタリア文学』も短歌が入っています。

http://www.shinwasha.com/051-7.html