海月記 ── 花笠海月の雑記帖

「くらげしるす」と読みます。

2022年12月16日(金)までの日記 篠さん、『文学と国柄――一九世紀日本における文学史の誕生』

 

2022年12月13日(火) 新臨時バイト/篠さん

 新臨時バイト。3月までここにいる予定。
 昼休みは近辺を散歩。原稿できそうな喫茶店と速達を出せる郵便局のめぼしをつける。


 篠弘さんの訃報。

https://twitter.com/asahi_tanka/status/1602605735992786945

 私は篠さんと直接おはなししたことはない。
 篠さんの仕事のすべてをよしとする訳ではないけれど、短歌史関係の著作は必ず参照する本だし、『残すべき歌論』といった比較的最近の本もいい仕事だと思う。大著『戦争と歌人たち』は、執念の書とでもいうべきもので、これまでいろんなところで書いているのを見たようなことの総まとめのような本。同じテーマで手をかえ、品をかえて書く、それだけくりかえし検討を続けてきたということでもあり、迫力ある本だった。*1
 篠さんとはおそらく気があわないだろうと思うけど、持っている資料の正確な取り扱い、そして師系の遵守が一貫していたことに敬意を持ち続けてきました。

 篠さんについては印象に残っていることが2つある。いずれもおなじ歌人協会の講座の時のこと。

 

 ひとつめ。2回ほどつぶやいているタカセさんとのやりとり。

https://twitter.com/hanaklage/status/670131551221366784

https://twitter.com/hanaklage/status/1591642127297318912

https://twitter.com/hanaklage/status/1591743915950243842

 

 先日つぶやいた時は2015年のつぶやきのことは忘れてました。検索したらもうひとつ出てきて、読んでみたらたしかに書きましたわという気持に。

 

 もうひとつが、「やはり歌集で評価されたい」というようなことをおっしゃっていたこと。篠さんでもそうなのか、と思いました。

 それから篠さんとは同席しても、お話せずという距離のままでした。数年前からもう元気がないという話は耳に入ってきたものの、結社の大会は出ているという話だからまだ大丈夫だろうと思っていました。
 最後にお見かけたしたのは、学士会館から出てタクシーに乗られるところでした。「ああ、やせたしまったのだなー」と思ったものでした。それももう何年か前のこと。

 

 「Tri」は篠さんがやっていない時代をしようということで立ち上げていて、次はどうしようかなーという状態ではあるのですが、迷っている時間はないのかも*2と思いました。

 

 以前もアップした2004年6月24日の協会賞授賞式であいさつをする篠さん。

https://twitter.com/hanaklage/status/960521404251742208

 

 あと、忘れてはいけないのは装幀の仕事。

 タカセさんもだけど、古い編集者はけっこう装幀もやってしまう人が多く(たいていは社内装幀としてクレジットなし)、篠さんもそのひとり。勤務先ではさすがにやっていないと思いますが、『現代短歌』のシリーズは篠装幀がけっこうあります。

 古代の遺物が正方形にはいって、上部タイトルというよくある装幀なんですが、篠さんの装幀はシブいのが多い印象があって、なんというか、そういうところでも好みがわかるのだなーと思うのでした。*3

 

2022年12月14日(水)

 臨時バイト2日目。

 実は、前任者がアレなやめ方をされたらしく。「明日きて」状態だったのです。この時期の臨時採用といえばだいたい年度末対応な訳で*4
 どんなアレな職場かとおびえながら出勤したんですが、むしろのんびりムード。「本当はいそがしいけれど、教える時間もないから私はヒマ」というのかと思って、できる範囲でテキパキと仕事していたら「え、まだいいのに」みたいな、というか、リフレッシュ休暇とっている人いました。
 とりあえず、現時点ではのんびりした職場です。

 あと、ここの現場、新聞とってます。新聞歌壇のスケジュールを把握して読みたいです*51ヶ月以上保存なのでさかのぼれます。

 

2022年12月15日(木)

 臨時バイト3日目。
 これまで睡眠時間がぐちゃぐちゃの生活をしていたため、仕事中もねむくなっていました。今日は帰宅後なにもせず、3時間ほど寝ました。眠れるかしらと疑いながらたおれたのですが、ぐっすり眠りました。

 夜中に起きてtwitterみたらこんなtweetなかしまさんが紹介されていました。

https://twitter.com/marinomori_/status/1603237004678156288

 

 絶対ほしい本です。

 


2022年12月16日(金) 『文学と国柄――一九世紀日本における文学史の誕生』購入


 ……ということで買ってきました。
 『文学と国柄――一九世紀日本における文学史の誕生』(エマニュエル・ロズラン/訳:藤原克己、鈴木哲平)


https://twitter.com/Iwanamishoten/status/1602846083582935040

https://www.iwanami.co.jp/book/b616709.html

www.iwanami.co.jp

 

 これを買ったのは藤原克己さんの新著(訳書なんだけど、藤原克己さんが仕事でもある、そういう側面を買った、ということです)であるから他ならない。

 買っただけでぜんぜん読んでないのだけど、目次を見るだけで、私の関心にちかいところと関わりありそうなテーマとか知りたいことがいくつもうかびあがってくる。


・「国柄」とは。*6

・和歌と短歌、国学と国文学という流れ

・やはり竹柏会系歌人としては信綱さんが気になるわけで。
 当時の入試がどういう制度だったのかさっぱりわからないのですが、信綱さんは13歳で帝大に入学しています。いったいどうやって??? そのへんは書かれていないのようです。*7単純な疑問として知りたい。当時のカリキュラムは割と書かれているようです。*8

・当時の東大の教授陣では芳賀矢一の仕事がとりあげられているっぽいのですが、では信綱さんはここで何をしたのか?*9

文学史とは「史」的な視点がないといけないけれど、それはどういうものか。

・私が学生だったころ、すでに芳賀矢一は通常の文学研究では参照されない人だったと思います。よく知らない人なので、業績がわかっていない。ここは素直に知りたい。

 

 ↑について取り扱われているという意味でなく、私がそういうものを思い出したというか思いついたということです。

 実際のこの本の内容は、岩波さんが目次をあげいますのでそちらをご覧ください(「目次」タブをクリックしないと見られません)。

 

 近代日本の変貌は、日本人は当事者目線で見てしまいますから、どうしても内省的になります。この本の目次を見ただけでも、世界的に比較すべき題材で、誰がみてもおもしろいのだということがわかると思います。

 いつ読むのかわからないけど、そのうち読みます。

 

どーーん。

 

大著だけど、意外と軽かった。

 

 ちなみに『戦争と歌人たち』。

https://twitter.com/hanaklage/status/1332206345852862464

 

 

 

 

 

 

*1:新規の資料を消化する時間がなかったとか、単なる手抜きの場合もあると思いますが、ここでは置いておきます。

*2:私の寿命的に。まだ死ぬ予定はないですけど、篠さんと同じ年まで生きたとしても折り返しはとっくにすぎている訳で。

*3:タカセ装幀はシンプルなのが多いです。

*4:本当に火がついていて年末対応もあるかもしれないけれど行ったことないので知らないです。

*5:たまたまtwitterで宣伝を見かけた13日の読売は読みました。からんさんが萌えについて語ってた。

*6:この点は「訳者あとがき」で明かれさています。「文学史の誕生」みたいなことがわかるともっとキャッチーだったと思うんだけど、そこをしなかったのは志だと思います。

*7:ここだけつまみ読みした。

*8:なぜか孫が『サラダ記念日』の作者の師であると紹介がありました。フランスでも有名なのか、『サラダ記念日』よ……。

*9:帝大教授としての信綱さんは実はあまり評価がされていない。翻刻の数々、特に『校本万葉集』、短歌関係の仕事はあきらかにされているが、東大教授としてどう学生を育てたのかはあまり伝わっていない。久松潜一が婿なのは有名だけど、あとは? という状態と思います。